2012年、経済・社会の動静、流通企業間の連合・同盟が雨後の筍のごとく蠢く合従連衡

                   ㈲グローカル・マネジメント社

                    代表取締役 小澤 信夫

             (淑徳大学国際コミュニケーション学部講師)

(序 論)グローバル経済・社会におけるニュー・ワールド・オー ダ(New  World  Order)=(新しい世界秩序)の 確立が急務

2011 2012
日本 -0.7% 2.9%
米国 2.5 2.7
ユーロ 2.0 1.7
英国 1.5 2.3
中国 9.5 2.3
NIES 5.1 4.5
ASEAN 5.4 5.7
インド 8.2 7.8

テキスト ボックス: 各国のGDP成長率予測(出所:IMF)


経済のグローバル化が一段と深化し、世界で起きている様々な経済等に関する諸問題がリアルタイムに日本 にも波及してきている。米国の経済成長が想定以上に弱く、 且つギリシャの財政危機とあいまって、ユーロー周辺国が抱える深刻な財政上の懸念から、再び金融市場の不安が高まり、世界景気の下振れリスクが上昇してい る。多くの先進国では、財政・金融部門の不均衡が長期に亘っており、景気の足枷となっている。日本も例外ではなく、債務残高は、GDP1.8倍 にもなっているのが現実だ。中 長期的に成長と雇用の創出、需要の再調整等、早急な対策が必要だ。                   
2011
年、日本の貿易収支は31年ぶりに赤字となる可能性がある。産業空洞化のドミノ現象が進んでお り、この対応策の覚悟が試されている。成長力を取り込み、競争力を取り戻せるか、TPP(環 太平洋経済連携協定)等への積極的な参加が各国から請われ ている。TPP交渉参加国は、ベトナム、オーストラリア、 マレーシア、米国など9カ国であり、TPP圏内の経済ボリュームをみると、米国69%、日本21%で あり、二国で、全体の90%を占めているのが現状だ。 「卵を割らないとオムレツは作れない」という諺が示すとおり、行動し、参加しなければ、 何も前へ進まないのが現実だと心に刻印しなければならない。




(1)日本は、6重苦を踏破するには、愚直な自助努力と政官財の連携でスピーディな対応を

今、日本には6つの難題が押し寄せている。①東日本大震災後の復旧・復興②円高による産 業の空洞化③厳しい経済・労働規制④高い法人税⑤TPP等、 外国との経済連携の遅れ⑥原発問題と電力不足-等などである。

海外メディアは、東日本大震災で全く違う2つの日本像を伝えている。一つは忠義を大切にする誠実な国民。親族が亡く なるなど悲劇を抱えながら秩序立って行動し、献身的に貢献していく。日本国民のまじめさ、勤勉さを多くの国が称賛した。もう一つは無能なリーダー像。原発 対応に見る稚拙な対応力と社会とのコミュニケーション能力、会議ばかりでまとまらない復興ビジョン。大震災のような事態になると国や社会、企業が持つ強さ と弱さがあからさまになる。今般の大震災からも、非常に強い現場力と非常に脆弱なリーダーシップという構図が浮彫りになった。リーダーの役割とは何か。1つ目は大きなビジョンを描いて意思決定し、結果責任を負う。そして人間関 係力で強い組織文化を醸成し、強い胆力を持ち、実行することだ。現状を打破できる強烈な個性を持ったリーダーが待たれる。

日本経済の正念場」と言われて、久しい。米国は住宅バブルの崩壊で 家計に住宅ローンの山を残し、欧州ではギリシャをはじめ借金を膨らませ、立ち行かなくなっている。リーマン・ショック後の米欧の財政悪化のピッチは、バブ ル崩壊後の日本より速い。米欧は、自らの経済不振を「日本化」「日本病」と揶揄しているが、あくまでも自分は別だという思いが透けて見えるのだ。困難な課 題が山積しているが、必ずや英知と信念で打破できるものと考える。「天は、その人が乗り越えられるハードルしか与えない」-諺のように。

 

(2)自由で開かれた国に、あらゆる規制の緩和を

今、日本政治の行動パターンを見ると、1853年のペリー来航を思い出す。開国か鎖国かで江戸幕府を混迷の状況に 陥れ、主体的な判断力を喪失したガバナンスである。政治や経済が内向きになり、客観的な大局観がなくなると、その国は衰退の一途を辿ることは、歴史が証明 している。TPPについても、積極的に参加し、その中で、 自国の主張を述べればよい。

参加する前から、否定的な論議をするのは、あまり にも内向きであり、「日 本異質論」に 収斂してしまう懸念が残る。農水省は農産物の生産減少で、農業は壊滅的打撃を受けると言っているが、一方の見方ではGDP2.7兆円増加するとの試算がされており、TPP参加効果を上げているのだ。「行動しなければ、結果は生まれない」。

今後、あらゆる面で規制緩和(DEREGULATION)を行い、人・物・金・情報が自由に飛び交う経 済社会にしなければならない。

 

(3)各種労働関係法令の見直しと規制緩和

パートタイマーの厚生年金見直しに厚労省が着手し ている。現行の週30時間労働から20時間労働へ、そして専業主婦の年収130万円基準を引き下げて、被保険者対象にして、保険料を徴収しようとす るものである。これは、あまりにも拙速な考えである。とりやすいところからとる」という考え方が透かして見える。

労働者の4割を非正規労働者が占めるようになり、年金制度に歪が出てきたのは確かで ある。加入条件を週30時間以上から20時間以上にすると、310万 人が対象になり、企業にとっては、年間3400億円の負担 増となる。

とりもなおさず、パートタイマーの大半が望んでい ないのに、被保険者とする案は、今後相当な反発があるだろう。現状どおりパートタイマーは、ご主人の被扶養者として第三号被保険者となり、年収130万円を超えないように働きたいという人が多勢を占める。

労働者派遣法については、いま少し派遣労働者を企 業が受け入れ易い制度にしなければ、

労働者の処遇は改善されたが、「仕事が無い、企業が受け入れない」という状況を生み出し、失業者を新たに発生させる ことになりかねない。いずれにしても、現実を直視し、声を聞いて、労働者や企業からも受け入れ易い制度設計に再構築すべきと考える。

 

.人 口縮む日本、忍び寄る高齢化

世界経済が人口高齢化に直面する。2050年に世界人口は1.3倍になるが、この間に65歳以上の高齢者は3倍の15億人に増える。とくに高齢化に見舞われるのが東ア ジア。労働力の不足や高齢化による社会保障費の増大がアジア経済の基盤を揺るがす可能性がある。昨年の11月に世界人口が70億人を突破した。人口変動は経済に大きな影響を及 ぼす。現在の人口大国は、中国、インド、米国で、日本人口は、1950年には、世界で5番目であったが、2005年から人口減少が始まり、すでに10番目、2050年にはフィリッピンやメキシコに抜かれて16番目になる。

○総務省、2010年国勢調査によると、日本人の人口が12535万人と05年の調査から37万人減少した。少子高齢化の加速ぶりを裏付けた。 世界は昨年で総人口が70億人を突破した。日本の一般世帯は51842千世帯で、うち3割が単身世帯だ。高齢化には一段と拍車がかかって いる。65歳以上人口は、5年前より3574千人増えて2980万人、総人口に占める割合は23.1%にもなっている。そして100歳以上が47756人と過去最多となった。2位のイタリア、ドイツ(20.4%)を更に引き離した。15歳未満の年少者人口が718千人減、15-64歳の生産年齢人口が306万人減となったのとは対照的な高齢人口の増加ぶり だ。日本は少子高齢化がいよいよ深刻化しきた。

●社会・世帯構造の大きな変化―高齢者世態1000万、世帯数の21%、 半数が独居老人 

 65歳以上の高齢者だけか、高齢者と18歳未満の子供だけの「高齢者世帯」が1020万世帯に達し、初めて1千 万世帯を突破。世帯総数に占める割合は21.0%に上っ た。高齢者が一人でもいる世帯は、20705千世帯と全世帯の約4割 に上がった。高齢者夫婦のみの世帯が619万世帯、「高齢 者一人暮らし」は501万世帯で、独居老人の世帯が初めて500万世帯を超えた。生活者のキーワードは「孤独」「高齢」「健康」「対話」「簡単」「便利-等 が浮彫りとなり、それに応える「店 づくり」、「商品づくり」、「売場づくり」「サービス」がお店の優勝劣敗を決めることになる。そして低 所得層が増加して、所得が112万円未満の人の割合が16.0%にもなっており、低所得層をターゲットにした商品づくりが求めら れている。

● 労働力人口確保、主婦がカギ 

2012年の労働力人口の推計は、6426万人。このまま少子高齢化が進めば30年には、13%減 の5584万人、50年には同34%減 の4228万人まで減る見通しだ。ただフリーター等の若者 や主婦並びに高齢者などを労働市場参加に向けていけば、ある程度の解決は出来るものと考える。日本女性の労働力率を年齢階層別にグラフ化すると、20歳代半ばと50歳 代前後に2つのピークを持ついわゆる「M字型カーブ」を描く。35歳―39歳の労働力率は66.2%と 大きく伸びているものの、仕事と家事や育児の両立が容易に可能な社会システムを構築するのが急務だ。そして25歳 歩54歳女性の就業率は、各国と比較して、著しく低く、22位の下位に留まっている。既婚女性の就業率は25-29歳が50.4%&30-34歳が52.0%と 少しずつ増えているが、より就業率を高めるには、在宅勤務など働き方の多様化を社会や企業は、積極的に進めなければならない。

                                                             

 2.合従連衡、スーパーの再編進む

2011年は地域や生活者を基軸にして、合従連衡が行わ れ、提携・合併並びに地域連合・連携や地方の弱小スーパーを組み入れた救済型の提携・合併が起きた。

筆者が昨年の新年号で予測したとおり、北海道の アークスやイオン、セブン&アイ・ホールディングスが資本・業務提携へと激しく動いた。地方においては、地場スーパーの再編が進み、大手スーパーの傘下に 入り、連合を組むなど、サバイバル戦略に必死である。創業者が高齢になり、後継者も育っていないという現状からだ。イオンは四国最大手のマルナカを子会社 化した。経営者一族へのバトンタッチではなく、イオン傘下に入って役員の派遣などを受け、経営の内部体質の強化を意図している。セブン&アイ・ホールディングは大阪を中心とする近商ストアに資 本参加し、物流や商品調達のマスと効率化を図り、グループの地理的拡大と強化を目指している。

北海道のアークスと東北のユニバースが経営統合に 合意し、時代を見据えた戦略体制を構築した。究極の価格競争が起きており、これに勝ち抜かなければ、合併や経営破綻に陥られることになる。大が小を飲み込 む合併や地方スーパーの連携・提携の動きが、水面下で着々と進んでいる。この体力消耗戦は、人材力の優劣で決まり、リーダの求心力とマネジメント力が勝敗 を決するのだ。

●百貨店の動静

百貨店も4ツないし5ツのグループを形成して、スケール・メ リットの追及、重複する業務の統合、外部の血の導入等々で業務改革を進めている。

 

◎三越伊勢丹ホールディング◎J.フロントリティリング=大丸、松坂屋連合

◎そごう、西武百貨店連合

◎エイチ・ツー・オーリティリング=阪急百貨店、阪神百貨店連合

◎髙島屋ハイランドグループ等々

 

今後の百貨店の動きは、より生活者に近づき、サー ビスの徹底に注力することになる。お買い物の手助け、より顧客に近づいたコンサルティング・セールス等々だ。一方で価格のディスカウント政策と大衆を目線 においた価格志向のテナント導入だ。

●スーパーマーケットとファストファション

少子高齢化社会が進展する中、モータリゼーション 時代の郊外型ショッピングセンターではなく、物理的にも生活者により近いところの店作りが地域社会から必要とされています。すなわちお店に来てもらうとい う発想ではなく、お店が生活者に近づき、地域に根付く店舗作りです。今後、地域密着型のスーパーマーケットやミニ、プチスーパーが隆盛を誇るものと推測す る。それと価格の安さと品質の良さを併せ持ったファストファッションの隆盛だ。物が売れない不況の中、高級ブランドを撤退に追い込む勢いだ。「高品質」 「低価格」でファッショナブルな衣料品を提供して、老若男女に大変な人気を博している。ユニクロ、H&M、 フォーエバー21等のような価値ある商品を安価で提供する 店が益々発展するものと予測する。

 

3.第二次流通革命――主役は生活者

1916年、米国のピグリーウイグリー店でセルフ・サービ スの販売方法が誕生し、1929年世界的大恐慌(パニック)を 背景にして、1930年にスーパーマーケトが誕生した。マ イケル・カレンがニューヨーク州でスーパーマーケット1号 店のキングカレン店を開設し、そこで始めてセルフ・サービス方式の販売が始った。商品の部門別管理を行うなど、当時としては画期的な商売のあり方を創りあ げた。日本には、昭和28年にセルフ・サービスの販売形態 が導入され、1955年代(昭和30)から1980年 代(昭和55)の日本の高度経済成長期のリーディング・インダストリーとして、大きな役 割を果たした。生活者にとって欲しいものが買えるようになる「大衆消費社会」がスーパーマーケット等々によって実現されたのだ。この大衆消費社会を牽引し たのは、総合スーパー(GMS)であり、セルフ・サービス の販売形態で、「安価」と「品質」の良さを実現して、生活者にバリュー(価 値)を提供してきたのだ。

第一次流通革命を先導した小売業を業態で分類する と次のように分けられる。

○総合スーパー(general merchandise store)

○スーパーマーケット(super market)

○百貨店(department store)               

○専門店(specialty store)

○ディスカウント・ストア(discount store)

○コンビニエンス ストア(convenience store)

○バラエティストア(variety store)

○超ディスカウントストア=ボックス・ストア等

総合スーパー等は、生活者に「適切な商品」を「適 切な時期」に「適切な価格」で「適切な場所」で提供するなど、その大きな役割を 果たしてきた。物がない時代、生活者が日々の生活に追われている時代に、手に届 く価格で販売するなどその社会的使命を果たしてきた。しかし、その総合スーパーも2000年 代から陰りが見え始め、苦境に喘いでいる。生活者の多様化や個性 化等々により、ハイ・クオリティ、ロープライスを求める高度大衆 消費社会の要請に応えられなくなってきた。一方で時代の要請から新しい業態が誕生した。ユニクロやGAP、 無印良品がそれだ。

一方で食品や生鮮食品を主体に品揃えをするスー パーマーケットや徹底した安さを追求す るディスカウンターは、着実に地域に根ざし、地 域密着産業として隆盛を誇っている。

●食品スーパーが小型店の大量出店を計画

ヤオコー、マルエツ、バロー等の各社が都心や繁華 街にミニスーパーの多店舗化を計画している。岐阜県地盤のバローは、前年度比5割 強の出店を計画し、マルエツは都心にプチ・マルエツの多店舗出店を計画、ヤオコーは 神奈川等に出店攻勢をかけるなど、地盤の広域化と強化を意図しており、ライフ は首都圏強化を見据えて、数店舗の出店を計画しています。

イオン系のミニスーパーであるマイバスケットや ザ・ビッグは、都心に数十店舗の出店を 計画している。セブン&アイも都心へハ イ・クオリティの品揃えの出店を計画して いる。

4.ボップ=ボトム・オブ・ピラミッド(BOTTOM  OF PYRAMID)
=
生活困窮者への 優しい眼差しが商売のキーワードに

 世界人口の7割の人々が年収3,000ドルで生活している現実を直視したビジネスを展開 しなければならない。日本においても、年収200万円内で生活を余儀なくされている人が多数占めて いる現実を見るに、価格破壊型や節約志向の生活者に応え、低価格政策を徹底する販売政策が求められている。既に昨年からその動きが出てきている。

2012年は、エブリデー・ロープライス(毎日一定の低価格で売る手法)の販売政策「毎日安売り」が消費者の節約志向を背景にして、一大隆盛とな る。

米国ではハード・ディスカウンターのトレーダー ジョーズ(TRADER JOES)に人気があり、国内でもダイエー、いなげや、西 友、オーケー、ヤオコー、アークス等々の企業が積極的な低価格政策を打ち出している。勿論、店舗の運営コストや物流経費の削減が前提である。今後、安さを 追及する100円ショップは、業種業態として、生活者の身近なところで、定着していくと考える。

生活者の優しい眼差しを向ければ、「消費にぬくもりを感じる低価格志向」は、必然的な帰結である。生活者の痛みを心の琴 線に刻み、商いを行うお店が地域から支えられ、愛される「出会い」「発見」「ふれあい」の場となるのだ。