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鈴木貞夫のインターネット商人元気塾
鈴木貞夫のインターネット商人元気塾【バックナンバー】

鈴木貞夫

1956年一橋大学卒、同年現池袋パルコ入社、1976年サンチェーン代表取締役社長、


1989年ダイエーコンビニエンスシステムズ代表取締役副社長、1995年ローソン相談役、


1999年ローソン親善大使。現在ソフトブレーン・フィールド(株)特別顧問。


1992年(社)日本フランチャイズチェーン協会常任理事、副会長を歴任 。鹿児島出身

鈴木貞夫氏(すずきさだお)
1934年1月3日生

【12月号】


<コンビニ創業戦記> 第9回
・・・ロ―ソンのル―ツ「サンチェ―ン創業物語」・・・


「サンチエ―ンの創業」

<T・V・Bサンチエ―ン時代(その3)>


――創業一年で100店舗達成に挑戦――
昭和52年(1977)と言えば、王貞治(現ソフトバンク監督)が通算本塁打756号を達成して世界一となり、国民栄誉賞第一号に輝き、日本が平均寿命世界一になった年である。
街にはカラオケが大流行し始めていた。

 

サンチェ―ンが懸命に急速出店を進める中で、人材問題と共に、日々緊急な対応を厳しく迫られたのは、チエ―ンシステムの構築であった。
「基本商品台帳の整備とメンテナンス」、「店舗発注の仕組み」、「店舗への物流システム」、
「店舗営業数値の把握の仕組み」、そして「店舗における商品ロス管理」等の問題である。
当時は現在と違い、商流・情流・物流共に問屋主導であったから、「多品種少量・24時間・年中無休営業」のコンビニ店舗への適切で柔軟な対応は全く期待出来なかった。

 

私は、『総員参画で明るさ溢れる組織を築こう』との方針を掲げ、「商品構成プロジェクト」「発注システムプロジェクト」「物流システムプロジェクト」「営業数値管理プロジェクト」「ロス対策プロジェクト」などを発足させた。
私は、「全ては現場からしか学べない。全員よく店を見よ」とミーティングの度に強調した。
「急速成長するサンチェ―ンの問題点は、全てお店にある。
お客様のニ―ズにしろ、商品管理やお店のオペレ―ションにしろ、人材の意識や組織、またシステムの問題にしろ、方針の徹底度にしろ、全てはお店に現れている。
しっかりと観察し、分析し、即対策を立案し、実行することである。
小さなことを見逃すな!
将来への問題点を早期に発見せよ!
お店で困っている問題、仕事のやりにくさなどを具体的に拾い出せ!」と激を飛ばし続けた。

 

各プロジェクトメンバ―は、それぞれ入社間もない若い社員が中心であり、日常の担当業務を兼務しながらの活動であったが、みんなで知恵を絞り合い、試行錯誤しながら、次第に形のある成果を産み出していく。
4月には、本部にコンピュ―タ―FACOM-Vを導入、翌年1月には、店舗と本部を繋ぐ第一次コンピュ―タ―システム「SUNICS」をスタ―トさせた。
8月には、世田谷青果市場からの直接仕入れを開始、11月にサンチェ―ン青果(株)として独立、川崎に青果センタ―を開設し、自社仕入れ、パック加工・配送を始める。
9月にはグロサリ―商品の自社物流実験を開始し,11月に足立区加平に,約400坪のサンチェ―ン物流センタ―を開設した。
これらは、日本で初めてのコンビニ専用の自社物流センタ―である。
当時は、ダンボ―ル単位・週1~2回の配送で、値札もお店が商品ごとにつけるのが常識であった。
この物流センタ―で、グロサリ―商品の店別小分け・値付け作業を行うと同時に、配送回数を増加させた。
そのことにより、店舗の商品在庫の適正化が進み、検品,値付け作業が大幅に軽減され、店舗生産性の向上に繋がっていく。
今日の世界の最先端水準にある日本のコンビニ物流の原点は、ここにあると自負している。
このようなチエ―ンシステムの基礎構築を、手作りで積み重ねながら、9月、10月と都内一沿に、出店をガムシャラに推し進め、遂に11月、待望の100店舗を達成する。
日本一・5000店挑戦の大きな夢からすれば、ささやかな通過点に過ぎなかったが、チャレンジ精神に溢れた無名の寄せ集め青年集団であった我々サンチェ―ンの同志たちにとっては、何ものにも替え難い喜びであった。

 

昭和52年(1977)11月15日、帝国ホテルに於いて、「サンチェ―ン100店舗達成記念謝恩会」を晴れやかに開催した。
メ―カ―・問屋・金融機関を始めとする136社239名に登るお取引先様が参集して下さり、熱気溢れる大盛会となった。
謝恩会は、壇上に店長100人が勢揃いし、渾身の力を込めての「社訓」唱和、全員のスクラムによる社歌「サンチェ―ン建設の歌」「目標5000店の歌」の覇気に充ちた斉唱で始まった。
私は、サンチェ―ンを代表して次のような感謝の言葉を申し述べた。
『サンチェ―ンが、創業一年で100店舗の規模にまで成長出来ました事は、我々の努力を実らせて下さった多くの関係先皆々様のお陰であります。
私はこれを三つのご恩と申しあげたい。
第一のご恩は、何と云っても「お客様のご恩」であります。「社会の恩」であります。
第二のご恩は、「お取引先様各位の皆さまのご恩」であります。「先生・師匠の恩」であります。
第三のご恩は、小松崎会長を始めとする「T・V・Bグル―プ同志のご恩」であります。
我々サンチェ―ンマンは、このご恩に報いるために、本日のこの喜びを深く胸に秘めると共に、一層の勉強を重ねて企業内容の充実、組織、質の向上を図り、日本一のコンビニエンス・チェ―ンを建設していく事を決意致します。
最後に我々サンチェ―ンマンが流通産業に賭ける使命感として、「四つの誓い」を申しあげて、感謝の言葉と致します。

 

「サンチェ―ン四つの誓い」
1・サンチェ―ンは、流通産業の本質的使命=人類社会における生活資源の最適配分と消費者としての人間の最大満足を追求する事に命を燃やして参ります。
2・サンチェ―ンは、豊富性・合理性・安心性・安定性の四原則を満たす生活必需品の適正な供給に努力して参ります。
3・サンチェ―ンは、流通業界の風通しと水の流れを良くすることに努力して参ります。
4・サンチェ―ンは個人・組織共に自らを厳しく磨き、他に良い影響を与えるよう努力して参ります。』



(以下次月号)

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